醤油作り用の醤油麹

作り方


醤油麹

材料

  • 大豆 360g
  • 丸小麦(砕かれていない丸い状態のもの) 375g
  • 醤油作りのための麹菌 1g程度

必要な道具:

  • 大きな鍋(圧力鍋を推奨)
  • 蒸し器(できればステンレス製)
  • 蒸し布(60x80cmぐらいのもの)
  • ボウル(小麦と麹菌を混ぜるもの)
  • タッパー(33cmx41cm、高さ13.5cmの14.5L容量のもの)
  • ビニール袋(45Lサイズ)
  • しゃもじやスプーン(大豆や麹菌を混ぜるためのもの)
  • 温度調節のできる電気毛布
  • 温度計
  • 保冷剤(温度を下げるためのもの)



《前日の準備》大豆の浸水


大豆を水の濁りがなくなるまで、もみ洗いするようによく洗う。
12~24時間、大豆が完全に水を吸い上げるまで十分に浸水させる。

冬場は15時間以上は最低水に浸す。大豆の表面にシワがなくなり、ふっくら完全に丸くなっていればよし。急ぎの場合は、ぬるま湯にしておくと、行程が短くなる。

暖かくなった4月の気候でも、常温で12時間では足りないぐらいだった。大豆を水の濁りがなくなるまで、もみ洗いするようによく洗う。
12~24時間、大豆が完全に水を吸い上げるまで十分に浸水させる。

冬場は15時間以上は最低水に浸す。大豆の表面にシワがなくなり、ふっくら完全に丸くなっていればよし。急ぎの場合は、ぬるま湯にしておくと、行程が短くなる。

大豆を完全に浸水させるには、暖かくなった4月の気候でも、常温で12時間の浸水では足りないぐらいだった。


ホール小麦を炒める


使用したのは、ドイツのオーガニックショップの全粒小麦。
日本で売られている丸小麦でも、もちろん作ることができる。

大豆と同量の体積の丸小麦をフライパンで炒める。

使用したのは、鉄製のフライパン。
弱火から中火の火加減で、15分程度、焦げないように、ずっとかき混ぜておく。

左が生の状態の小麦、右が炒めた後の状態。
炒めた後の丸小麦は、生の状態の時よりも、透明感がなくなり、白っぽい箇所が多くなり、茶色い部分も粉っぽく見える。

十分に炒めると、パチパチという音がしてくるので、そうなったら火から下ろす。
今回は、あんまり焦げ無い程度にあっさりと炒めて、終了。


ホール小麦を砕く


大さじ2~5程度の少ない量を 山本電気のミキサー(YE-MM41W)に入れて、15秒~30秒間、モード7で回す。
スタンドタイプのブレンダーでも何度も小麦を砕いてみたけれど、麦を砕くには時間もかかる。ハンドタイプのブレンダーではいささか馬力が足りなかった。

あまり長い時間を回しすぎると小麦が粉状になってしまうので、荒く砕けた状態になる程度で止めておく。

大さじ2程度を15秒程度、モード7で回すとちょうどよい具合に荒く砕くことができた。(写真では大さじ2よりも多い量が入っている。)

一度の全量をミキサーに入れると、長い時間、回せば回すほど粉の部分が多くなってしまう。
手間がかかるが、少量ずつやるとうまくいく。

砕いた小麦は別容器に入れて冷ましておく。


大豆を蒸す


浸水し始めてから、12時間後の様子。まだちょっとふくらみが足りないので、更に水につけておき、大豆が完全に水を吸うのを待つ。

蒸し布でくるんで、ふたをして、圧力鍋で15分ほど蒸す。醤油用の醤油麹を作るときは、大豆を茹でてはいけない。

蒸し上がった状態の大豆。水で煮た場合より、蒸した場合の方が大豆の色が濃い。


大豆をカットしてみた。ちゃんと中まで火が通っている様子。

20度の温度になるまで、大豆をタッパーの上に、蒸し布ごと広げて、冷ます。
蒸し布は、大豆を覆い尽くすことができるぐらいの大きさがよい。

今回は、33cmx41cmの大きなタッパーを使った。500gの大豆が、広げが大豆が重ならない程度の大きさのものが必要。大豆を重ねておいてしまうと内部の温度が上がってしまいやすくなるため、納豆菌に犯されてしまう。放熱できるように、平べったい、大きめのタッパーを使うのがおすすめ。


種菌をつける(種付)


こうじ座で買った醤油用の麹菌。この麹菌は醤油醸造のために大豆や小麦専用の麹として売られているもの。学名は、味噌や甘酒を作る麹菌であるAspergillus oryzaeであるけれど、醤油醸造用の麹菌は大豆のタンパク質を分解する力が強いそう。

こころなしか、色が緑っぽい。少し多めに2gほど使用。

砕いた小麦に麹菌をよく混ぜておく。


仕込み開始


20度ぐらいになった蒸し大豆と小麦を混ぜる。

大豆を捏ねて潰してしまわないように注意する。捏ねると菌が繁殖しにくくなるらしい。

小麦の粉で大豆の表面が覆われる。
大豆は温度が高くなると納豆になってしまいやすいが、大豆を粉で覆うことで雑菌を繁殖しにくくするという役割がある。

蒸し布で包む。温度計とかき混ぜるために使ったスプーンも後で使うので、一緒にくるんでおいた。

タッパーの蓋をずらして置き、タッパーを大きなビニール袋に入れる。口を閉じずに、空気が入るような状態にして、電気毛布と毛布で保温する。
温度計が箱から飛び出しているので、折らないように注意する。

最初は品温が30度ぐらいになるまで電気毛布の温度を高めに設定しておいた。

品温が高くなりすぎると、雑菌にやられてしまう可能性があるので、30分から1時間おきに細かく温度をチェックした。

温度が高くなりすぎないように細心の注意を払い、品温が30度~33度ぐらいを超えないように温度設定を行う。

次の手入れは約18-22時間後に行う。その間、就寝する場合は、就寝前に温度が高くなりすぎないように様子を見ながら、少し温度設定を低めにしておく。今までの経験からすると、36度以上になると、失敗する確率が高かったので、温度設定は33度を超さないように低めを目指した。

22時間後、品温は35度近くまで上がっていたので、一旦取り出し、手入れをした。

手入れをすることで、温度が上がりすぎるのを防ぐことができる。

35度以上温度が高い場合には、保冷剤などをタッパーの下に敷くなどして、温度を下げるようにする。
春から夏の終わりにかけての仕込みは特に、急激に温度が上がりやすくなるので、保冷剤は必須になる。

22間後の手入れの時の様子。
最初に比べると、小麦の粉が大豆のまわりに絡みついて、全体的に麹菌の胞子らしきもので覆われ始めてきたように見える。

タッパーの角の部分で、電気毛布のあたりが悪かった部分(温度が低い部分)は大豆の素肌が見えたような状態で、こちらは粉っぽくなかった。つまり、発酵に適した温度でない部分は、麹になりにくいよう。

まんべんなく手早く全体を混ぜて、布で包み、また保温する。

発酵の後半になると、温度が特に上がりやすくなるので、3時間おきに温度チェックするなどしていた。

種麹屋さんのアドバイスで「xx時間後に手入れをするより、37度まで温度が上がった時点で手入れをするのがよい」と麦麹作りの時に教えてもらったので、この経験を生かし、時間ではなく、温度を軸にして、手入れをすることにした。

醤油麹の場合は、温度が高いと納豆菌にやられてしまうので、33度ぐらいまでしか温度が上がらないように注意した。

これ以降は、温度が上がりすぎていたら、冷ますために手入れをするようにした。

就寝時は数時間、温度がチェックできないので、この日は3時間半後に起きて、温度チェック後、電気毛布の温度を設定しなおしてから、寝直した。


出麹(48時間後)


約48時間後、出麹での状態。
全体的に、うっすらと緑がかっている。

覆っていた蒸し布を醤油麹に被せずに、醤油麹を乾燥させる。

乾燥させて、温度を下げることで、麹菌の発酵を止める役割がある。

出麹から1日後、さらに醤油麹全体が緑っぽくなった。

新鮮なうちに醤油作りに使いたかったので、すぐに醤油作りにとりかかることにする。

完成した醤油麹のアップ。肉眼でもふわふわした胞子が確認できる。

単焦点マクロレンズで撮影すると、麹菌の胞子が小麦の割れた部分にまでびっしりと生えている。麹菌撮影にはマクロフォトレンズがとても役にたつ。
使っているのはキャノンのMP-E65MM。


麦麹

作り方


出来上がり:約280g

  • 裸麦 260g ※かわしまやで買った丸麦
  • 麦用の麹菌 1g程度

必要な道具:

  • 大きな鍋(圧力鍋を推奨)
  • 蒸し器(できればステンレス製)
  • 蒸し布
  • タッパー(33cmx41cm、高さ13.5cmの14.5L容量のもの)
  • ビニール袋 45Lサイズ
  • しゃもじ
  • 温度調節のできる電気毛布
  • 温度計
  • 麦を広げて、冷ますための容器





丸麦を浸水させる


duration:
about 60 min.

今回使用したのは乾燥丸麦。
押し麦では水を吸いすぎるらしいので、丸麦を洗った後、1時間、20度の水温で浸水させる。


吸水後の丸麦。
吸水後はざるにあげて、よく水気を切る。

1時間の吸水後の重さは約1.5倍だった。


今回はかわしまやで購入したものを使用。他のメーカーのものも使ったが、これが一番うまく行った。


圧力鍋で蒸す


duration:
about 20-30 min.

圧力鍋に蒸し器を入れ、その上から蒸し布をかける。
丸麦を入れて、20分蒸す。
圧力鍋の使い方については、米麹の手順とほぼ同じ。

蒸しあがったら、火を止めてから、鍋内部の圧がとれるまで放置する。



蒸した後は、ある程度透明感があり、もっちりとした食感。
芯がなく、手の指でひねると潰れる。
水分の多すぎた状態だと菌糸がまわらないので、カラッと蒸しあがるようにする。


丸麦に麹菌をつける(種付)



duration:
about 5 min.


麦麹を作るために使用したのは、麦を麹にするための麦味噌用の麹菌。

麹菌には、種類によってデンプン質、タンパク質を分解しやすいものがそれぞれある。麦用や米用、大豆用など種類があるので、用途にあったものを使用する。
つまり米用や大豆用の麹菌を使ったりした場合、麦を麹にするのに適していないので、麦麹がうまくできない。


35度程度まで冷ました麦に麦用の麹菌を振りかけて、清潔な手で麹菌を表面に刷り込む。

まだコツがつかめていない間は、種菌を少し多めに使った方が失敗が少ない。
今回使用した菱六の麦用麹菌は若干色が緑色で、独特の匂いがある。


仕込み開始



布で包む時に、ワイヤーを利用した。

少し緩めに縛っておくと空気が入りやすい。
経験的に、空気との接触が多い布の口の周辺にたくさん白い菌糸が回っているが、これはやはり酸素にあたっているからかもしれない。

もし種付けした後に、品温が低ければ、タッパーに入れずに清潔なビニール袋に入れた状態で電気毛布の上に直接置き、品温が33度になるまで温める。

品温が33度に達したら、それ以降は、タッパーの中に置いて、電気毛布からの直接の熱があたらないようにする。温度が低すぎても高すぎても麹菌が繁殖しないため、これから約48時間後の出麹まで温度管理に絶えず注意する。

タッパーの中に置く時は、今回はこのように蓋をずらしておいた。密封すると麹菌の酸素補給ができないため。

タッパーごとビニール袋に入れて、電気毛布と毛布で包む。完全に包んでしまうと、酸素が入らないため、タッパーを3/4ぐらいつつむようにして毛布をかけて保温して、ビニール袋の口は電気毛布と毛布の外で広げておき、空気が入るようにした。

品温が33度前後をキープできるように温度設定をする。
品温が上がりすぎたら、電気毛布の温度を下げて、麦の品温が上がりすぎないように始終注意する。

できれば1時間ごとに温度をチェックしておき、電気毛布の温度調節を行う。

1度目の手入れの前に就寝する場合は、就寝前には温度調節ができないので、必ず温度設定をしてから寝る。品温が38度ぐらいに達していると、数時間後にはすぐに45度以上になってしまう可能性があるので、寝ている間に品温が45度以上になってしまわないように、電気毛布の温度設定を少し低めにしておく。


1度目の手入れ



1度目の手入れ:菱六の説明書には、1度目の手入れは15~20時間後で、品温が37~40度の時に行うと書かれている。

菱六に問い合わせした時に、時間を目安に手入れをするというよりは、品温が上がった時に手入れした方がよいというアドバイスをもらった。

約21時間後、品温が38度に達していたので、布を開いてすばやく麦の粒がばらばらになるように崩していく。布に付着した麦を剥がすように、全体に空気が入るようにしゃもじなどで全体を入れ替える。

この時すでに、アルコールのような少しツンとした香りが部屋全体に漂ってくる。


一度目の手入れの時点ですでに菌糸が目視で確認できる。

温度が高くなると、どんどんと蒸し布が乾いてくる。

タッパー内の湿度が90%以上になるようにする。湿度管理のために、蒸し布が乾いていたら、蒸し布にわずかに水を含ませて少し湿った状態にしておいた。濡らしすぎて、麦に水を吸わせないようにする。
タッパー内に水を入れた皿などを入れて湿度を高める。

麦麹は温度管理が特に大事なようなので、これ以降、麦を包んで保温するか、それとも広げた状態にするかは、この時の品温によると考えた。もし手入れ後に33度以下の品温になってしまったのであれば、包んで温度が上がるようにし、もし温度が高すぎるようであれば、タッパー内で広げておいて、放熱させるようにと、保温状態を温度により変えた。

45度以上の温度になると、焼け麹と言って、麹菌の菌糸が回らなくなってしまうので、高音の場合は保冷剤を使ってでもタッパー全体を一度冷やして温度を下げるようにする。

麦の量が多ければ多いほど、品温が急激に上がるので注意する。

2度目の手入れ



2度目の手入れは、約36時間後、38度になっていたので、布を広げて放熱させた。
温度が高くなったら布を広げて、電気毛布の温度を下げるということを小まめに行う。
発酵が進むと温度が突然上がるので、品温が40度以上にならないように、十分に注意する。

この時点でも、タッパー内にたくさん水滴が見られる。


3度目の手入れ




3度目の手入れは45時間後、38度ぐらいだった。

表面に白い菌糸が回っていて、麦が一枚の板のようになっている。

温度が高くなり、蒸し布がほとんど乾いた状態になり、タッパーを入れておいたビニール袋とタッパー内部にはたくさんの水滴がついている。

湿らせておいた蒸し布のあたりが特に白い菌糸がたくさん回っている。

蒸し布に触れていない真ん中部分の方が白い菌糸が少ないように見えた。


麦全体が板状になっていて、蒸し布に張り付いていたので、蒸し布から剥がしとり、麦の粒がばらばらになるように手入れを行う。

すでに菌糸が回っているようだったので、これで出麹とするか、もし菌糸の周りがよくなければさらに数時間、温度設定をして、発酵させる。

出麹&乾燥


42~48時間後に出麹となる。
麦の粒をばらばらにして低温の湿度の少ない場所で、乾燥させる。
低温で乾かすことで、麹菌の発酵の働きを止めることができる。
ジップロックなどのフリーザーバッグに入れて、冷蔵庫で保存し、長くても7日以内、できれば数日以内に使い切る。

もし破精込み具合がよくなく、麹になっているか判断できない場合には、食べてみると米麹の時と同じように、麹の風味と甘さがあれば、麦麹になっている。
麦麹は温度が高くなっても、納豆菌に犯されにくいと言われているが、一度温度が高くなりすぎた時は、麦に菌糸があまり回らず、食べてみると納豆風味の麦ができてしまった。もし納豆風味の麦になっていたら、おそらく納豆菌に繁殖されている可能性が高い。

乾燥後の重さは、278g。
浸水前の丸麦の重さが260gだったので、約1.06倍の重さになった。

米麹

作り方


米麹があれば、味噌、塩麹、甘酒、酒が作れる

日本の伝統食品である味噌、酒、みりんなどの原料ともなっています。

最近では大手のスーパーマーケットやデパートに行けば、乾燥の米麹がたやすく手に入るようになりました。
そのおかげで、米麹を手作りしなくても、味噌や塩麹を家で簡単に作ることができます。米麹を手作りしない分、手間が省けます。

しかし、本当にいいものを作りたければ、乾燥よりも、生の米麹を使うのがよいでしょう。

生の米麹がおすすめな理由は《酵素力価》の強さ!

どうして生の米麹が乾燥よりも良いのかというと、生の米麹は新鮮な分、乾燥米麹よりも酵素力価が高いということが言えます。
米麹には麹菌はたくさんの酵素が含まれていますが、この酵素力は時間とともに衰えてしまいます。

生の米麹の消費期限は、わずか7日程度。 生の米麹を扱っている店も実際、多くありません。
米麹の酵素力が活発なうちに仕込みができることを考えれば、手作り米麹には多くのメリットがありますね。
 

米麹は自然とのコラボレーションで生まれた

江戸時代の書物「本朝食鑑」の「麹」の項にはこのようにあります。

和名は加無太知(かむたち)。今は古宇志(こうじ)という。 (略)製法は、好い粳米の春白(つきしらげ)したものを一昼夜水に浸して、取り出し、水気が乾いたら甑(せいろ)で蒸して飯とし、これをむしろにひろげて一日露にあてる。木盤に盛って土窖(あなぐら)の中に置いてむらさせると、大抵三日間で白衣(しろかび)を生じるが、この時取り出して用いるものを俗に白麹という。

麹菌は元来、藁などに付着していたり、大気中に漂ったりと、自然界に存在している菌です。
本朝食鑑には、蒸米を作り、穴蔵の中に3日間置いておくと白かびができ、これを白麹という、と書かれています。
どこにでも存在していたニホンコウジカビが、知らぬ間に蒸した米にカビをつけたのが米麹の始まりだった、と言えるかもしれません。「土窖(あなぐら)の中に置いてむらさせる」という記述からも、乾燥した状態ではなく湿度の多い状態にしておくとカビができたということが想像できます。

現代の日本で売られている種菌を使えば、江戸時代のようなその辺に漂っている麹菌をキャッチして発酵させる”アナグラ法”に頼ることなく、麹作りで失敗する率はかなり低くなること間違いありません。
よく考えて見ると、私は市販の種菌を使って米麹を作ってみて、失敗したことが一度もありません。(もちろん保温などちゃんとした上でのことですが。)
それぐらい麹菌というのは優秀で、麹作りは簡単なのです。

自分で作れば、米麹をカスタマイズできる

麹菌というのは、かつては「もやし屋」と呼ばれた種麹屋で培養された菌のことで、だいたい、パウダー状のものが売られています。
これらのものが、米麹、麦麹や醤油麹を専門に作る製麴業者に販売されているだけでなく、大変ありがたいことに一般のエンドユーザーでも買うことができるようにと小売されています。

種麹メーカーのひとつである菱六さんにに伺ったところ、米麹用の「小袋粉状」に使われている麹菌はアミノ酸を作り出す力が強いため、味噌作りに使えばより美味しい味噌ができるということでした。

同メーカーの「改良長白菌小袋粉状」はデンプンを分解する酵素が多く入っているそうで、この麹菌を用いれば、甘酒がより一層甘味が増すということです。

つまり最終的に、米麹で甘酒を作りたいのか、味噌を作りたいのか、あるいは酒を仕込みたいのかによって、選ぶ麹菌を変えることができます。

つまり米麹を自分の好みにカスタマイズできるのです。
酒造りには、酒造りに適した麹菌があるらしいのですが、市販では出回っていないでしょう。
そのため甘酒用の麹菌を使うのがいいのではないかと思います。

スーパーに並ぶ乾燥米麹も便利ですが、美味しい味噌や甘味の強い甘酒を仕込みたいならば、ぜひ麹菌を選ぶところから始めて、米麹を手作りしてみてください。




出来上がり:約1kgの米麹

  • うるち米 900g
  • 米用の麹菌(Aspergillus oryzae)1g

必要な道具:

  • 大きな鍋
  • 蒸し器(できればステンレス製)
  • 蒸し布
  • しゃもじ
  • 電気毛布、もしくは温度調節ができるヨーグルトメーカー
  • ダンボールなどの保温箱
  • 温度計
  • 3〜5L程度の容量が入るタッパーなどの平たい容器
  • タッパーが入る大きさのビニール袋

準備


duration:
about 5-10 min.


仕込みをする前日の夜に、米を浸水させておく。

米のぬか成分が取れるまで洗い、濁った水が米からでなくなったら、米の2、3倍の水に一晩つけておく。 夏場は6時間以上、冬場は、15時間以上を目安にする。 次の日、麹菌の種付けが終わってから、約48時間後に麹が完成するまでの間、8時間から12時間ごとに米麹の手入れをしなくてはならない。それを見越して、次の3日間の米麹作りのスケジュールをたてる。

米を蒸す


duration:
about 30-60 min.

仕込み当日、前日の夜に浸水させておいた米をざるにあげ、1~2時間かけ、水を切る。

大きめの鍋に、蒸し器の底が濡れない程度の量の水を入れる。 蒸し器の底が濡れてしまうほどの水を入れると、米がベタッと蒸しあがってしまい、逆に水が少な過ぎると鍋が空焚きされてしまうので、水の量には注意する。

圧力鍋だと短時間で米が蒸しあがるので、蒸し器に接触した部分の米が水っぽくならず、米麹に適した具合で蒸しあげることができるのでおすすめ。

薄手の蒸し布を水に濡らし、固く絞って蒸し器にかける。その上から、十分に水切りをした米を入れる。

蒸し布は分厚目のものよりも、表面に毛羽立ちのない、つるりとした手ぬぐいタイプのものがよい。

米を蒸し布で覆い、圧力鍋の場合は、圧がかかってから20分、火にかける。20分後に、火を止め、圧が抜けるまで鍋を冷ます。 圧力鍋以外の鍋の場合は、40分程度蒸す。この時、米が水気を吸ってべたべたにならないように気をつける。

蒸しあがった米は透明感がある。 もし、水気を多く含んで膨れ上がっていて、白っぽく、普段食べているごはんのような柔らかさだと米麹用の蒸し米には向かない。 指先で挟みつまむと潰れるぐらい柔らかいけれど、食べるには固すぎる、手で触ってもあまりくっつかず、ぱらぱらと手から簡単に剥がし落とせるぐらいがよい。

米1kgに対し、3~5L容量の平べったいタッパーだとちょうどよい。 口の小さい、底の深いタッパーだと、米に酸素がいかず、麹菌の胞子の発芽に適した環境にならない可能性があるので、なるべく平たいものを選ぶ。 タッパーと蒸し米を混ぜるしゃもじなどは、それぞれ消毒しておく。

蒸しあがった米を蒸し布ごと鍋から取り出し、タッパーにひろげる。 蒸し布にこびりついた米を剥がすように、しゃもじで全体を冷ますように、上下に切り返す。 水気を多く吸った米粒の塊などがあれば、それを分解して、水っぽい米の塊がなくなるようにする。米一粒一粒がばらばらになるように蒸し米を切るように混ぜる。ここで、捏ねて、餅のようにしてしまうと麹菌が繁殖せず、米麹にならないので注意する。

麹菌をつける


蒸し米の温度が35度程度まで下がったら、麹菌をつけていく。 温度を早く冷ますには、冷えた部屋に一時おいておくなどする。

1kgの米に対して、1g程度の麹菌を使用する。 麹菌の入った小袋から上手く撒くことができない場合は、茶漉しや紙を折ったものにパウダー状の麹菌を乗せて、蒸し米の表面にまんべんなく、麹菌を撒く。 清潔な手で、麹菌が蒸し米の表面全体に付着するように、両手を使い、蒸し米を揉み込むようにすりつけていく。 麹菌が付着しなかった箇所には、麹菌が繁殖せず米麹にならないので、この作業は丁寧に行う。

作業が終わったら、蒸し布で蒸し米を包む。 最初に消毒しておいたしゃもじは、かき混ぜる時に使うので、タッパーに一緒にいれておくと便利。 タッパーの蓋は湿気が逃げないように軽くかぶせておく。 麹菌繁殖のために、空気が必要なので、蓋は完全に閉めてしまわない。 タッパーを大きめのビニール袋に入れる。 蒸し米を包んだ蒸し布と蒸し米そのものが水分を含んでおり、タッパー内の湿度はおのずと高くなる。高い湿度の環境で麹菌は繁殖しやすい。電気毛布で保温した時に、湿気が逃げないようにビニール袋を利用する。

ビニール袋の口は開けた状態で、箱の外側に出しておく。 9段階の温度調節ができる電気毛布を箱に入れて、その上にタッパーを置く。 米麹の内部温度(品温)が麹菌の種付けの時点で下がり過ぎていると、製麴に適さないため、最初の1、2時間は、米麹の品温を計るために温度計をタッパーの隙間から蒸し米に刺しておき、温度をチェックする。 (例えば、品温が28度だった場合、品温が33度になるまで電気毛布の温度を高めにセットする。品温が33度に達した後は、33か34度をキープできる温度に設定する。)

今回はダンボール箱を保温箱として使用した。 箱を利用せずに、厚手の毛布の上に電気毛布を置き、その上にタッパーをおいて、包んでもよい。 ビニール袋の口は外に出しておく。 湿度の高い環境を作ることができるのであれば、もちろんこのメソッドでなく、製麴室を手作りするのでもよい。

保温と手入れ(製麴)


fermentation
about 48 hours

これから約48時間、保温し、出麹まで4回手入れを行う。 手入れを行う時には、品温が下がってしまうので、手早く行う。 写真のように塊になっている米粒があれば、毎回、米の一粒一粒がほぐれるように、しゃもじで米の塊を崩していく。水っぽい米や、塊の内部には、麹菌が発芽しないので、この作業は丁寧に行う。 麹菌の胞子が発芽するには、品温30~35度、湿度95%以上の環境が適している。 もし、蒸し布が湿っておらず完全に乾燥しているようであれば、わずかに布を湿らせて、ビニール袋の中の湿度が高くなるように調節する。 以前、ビニール袋の代わりにキッチンペーパーでタッパーを包んでみたところ、タッパー内の蒸し布が乾きすぎてしまい、上手く湿度を保てなかった。そのため、手入れ時に、蒸し布を見ながら、乾燥が進みすぎていないかを毎度チェックする。

after 10-12 hours

10時間から12時間後に一度目の手入れを行う。 この時、タッパーから出す前に、品温をチェックして、温度が30度以下だったら、品温33度を目指して、電気毛布の温度を少し高めに設定する。 品温が40度に近くなると、麹菌が納豆菌にやられてしまう危険性があるので、あまり品温が高くなりすぎないようにする。 素早く手入れを行い、米を切り返したら、また蒸し布に包んでタッパーに戻す。

after 22-24 hours

22時間から24時間後に2度目の手入れを行う。 この時点で、蒸し米の表面に白く粉がふいたような箇所が見える。麹菌の胞子が発芽し始めたことがわかる。 発芽が盛んになると温度が上がりやすい傾向になるので、品温をチェックして、必要があれば電気毛布の温度を下げるなどする。 蒸し米を切り返すことで温度を下げる役割もある。

after 32-36 hours

32時間から36時間後に3度目の手入れを行う。 最初に比べて、蒸し米が随分白っぽくなり、さらに粉をまぶしたような状態になる。 米全体が麹菌の胞子で覆われ出す。 この時も、米の塊があれば、しゃもじでばらばらになるように切り返す。

after 40-42 hours

40時間から42時間後に4度目の手入れを行う。 4度目の手入れの時には、麹菌の胞子が肉眼でもはっきりと見えるようになる。白くて、胞子のふわふわとした毛足が蒸し米全体を覆い、米麹特有の甘みのある香りを放ち出す。 発酵が進むと、さらに温度が上がってしまう傾向があるので、品温を計り、電気毛布の温度を調節する。

仕上がりに近づくと、蒸し米が大きなブロック状の塊になってくるので、切り崩す。 手入れ後は、麹菌のふわふわした毛足が見えなくなってしまうこともあるが、変わらずに発酵は進んでいく。 ビニール袋の中に、水蒸気がたまり、水滴がつくが、湿度を保つため、水滴はそのままにしておく。蒸し布で包み、48時間経つまで保温する。

出麹(乾燥)


drying:
24 hours

48時間経過したら、出麹となる。 食べてみて、米麹特有の香りがして、米麹の甘みがあれば完成。透明感のあった蒸し米の表面が完全に、白く粉っぽくなり、米粒全体が麹菌で覆われていればよし。 もし、粉っぽさがまだらになっていたら、破精込みが十分でないということ。完成度が低い場合には、33度の室温をキープして、さらに数時間保温させて、様子を見る。このような場合、保温途中の温度・湿度管理が十分でなかった可能性がある。

出来上がりの場合は、布ごと米麹を取り出し、広げて室温が10度ぐらいの場所で24時間ほど乾燥させる。 塊になっている箇所があれば、しゃもじで米粒をばらばらにする。 写真は、オーブン網の上に、湿気取りのためのキッチンペーパーを敷き、その上に米麹を広げた状態。低温の室内で数時間、乾燥させる。夏の高温の室内だと、発酵がさらに進み、米麹が傷んでしまうので、室温を調節し、扇風機などを使って数時間で手早く乾燥させる。


出来上がり!



expiration date:
within 7 days

乾燥後、米麹はフリーザーバッグなどで密閉して、冷蔵庫で5〜7日程度日持ちする。 だが、時間の経過とともに、麹菌の酵素力が落ちてくるため、一日でも早く消費してしまうのがよい。 味噌作りに使う予定であれば、この時点で塩切りしておく。 酒を仕込む場合には、日の浅いうちに始めるのがよい。